ISO9001には、品質方針を確立することを要求事項としております。品質方針と品質目標の違いについて、述べさせていただきます。
品質方針の要求事項
品質方針の中に入れるべき内容が要求されております。
品質方針を確率すること
- 組織の目的及び状況に対して適切であり,組織の戦略的な方向性を支援する。
- 品質目標の設定のための枠組みを与える。
- 適用される要求事項を満たすことへのコミットメントを含む。
- 品質マネジメントシステムの継続的改善へのコミットメントを含む。
品質方針を伝達すること
- 文書化した情報として利用可能な状態にされ,維持される。
- 組織内に伝達され,理解され,適用される。
- 必要に応じて,密接に関連する利害関係者が入手可能である。
こんな要求事項があるので、どこの会社も同じような品質方針になってしまうと思っております。なんか、詳細に要求しすぎていて、企業の独自性がでない品質方針となっているように思います。下手をするとそれぞれの要求事項を羅列した「当社の品質方針は組織の目的および状況に対して適切に対応し、組織の戦略的な方向性を支持し、品質目標設定のために枠組みをつくり、要求事項を満たすコミットメントし継続改善を行うこととし、品質方針を文書化してだれでも利用できるようにし、組織内で伝達できるように理解され、密接に関連する利害関係者に対して提供できることとする」のような内容の無い品質方針ができてしまうと懸念しております。品質方針とは、品質の方向性をどちらに向かわせるかを文書で示し、その内容を全社員に理解してもらえばよいので、細かいことは、逆に全従業員への理解を隔ててしまうものだと思います。
方針は方角と同じであると思っております。現在があって、未来の形があって、そこに向かう角度を示せれば、それで良いと思います。品質を落としていこうという経営者はなかなかいないと思いますし、費用を度外視して品質にのみ経営資源を垂れ流しする経営者もいないと思います。ただ、品質を上げていくという経営者の気持ちを反映した経営者独自の言葉であれば、要求事項を品質方針の文書中に入れこまないでも良いのではないでしょうか。例えば、「当社は、なんとなく品質は徐々にあげていく」とか「当社は、クレーム0を目指して利益よりも顧客満足度を優先していく」とかでしょうか?
ただ、ISOの審査は、要求事項に合致しているかどうかを判断されるので、なかなか端的な言葉では、要求事項を満たしていると思われないので、難しいところです。
品質目標
品質目標は、品質方針とは違い、いつまでにという時間軸と測定できる指標をもったものと認識しています。
具体的には、1年間ごとの品質目標を企業全体ベースで作成し、その品質目標を各企業の枠組みでそれぞれ目標を立てて、さらにその下の組織に落として品質目標を立てていくという形だと思います。この階層は大きな会社になれば、階層が増えて、あまり大きくない会社であれば、階層は少なくて済むのではないでしょうか?どの段階で、品質目標を作っていくかを品質マニュアルや規定等で定めておくと良いと思います。
中長期の品質目標を立てる会社もあると思いますが、それでは、PQCDの回りが遅いので、1年または半年周期が良いと思っております。
品質目標の満たすべき要求事項は、
- 品質方針と整合している。
- 測定可能である。
- 適用される要求事項を考慮に入れる。
- 製品及びサービスの適合,並びに顧客満足の向上に関連している。
- 監視する。
- 伝達する。
- 必要に応じて,更新する。
- 実施事項
- 必要な資源
- 責任者
- 実施事項の完了時期
- 結果の評価方法
以上は、品質目標を立てる上で文書化することが必要です。完了時期については、規定にて毎年目標を作成することとすれば、各品質目標にいつまでということは記載しなくても○○年度品質目標とすることで年度の終わりにと限定していると同じであると考えられます。審査の時の答え方とすれば、品質方針との整合については、なんとなく回答すれば、品質方針が良い方向を指し示していて、目標が良い方向に乗っていれば、整合しているのではないでしょうか?
目標を達成するうえで、進捗管理方法
品質目標を1年間とすると、現在と状況と年度の終わりの状況について、まずは、評価の指標を決めて数字で判断するようにすることがポイントです。例えば、品質目標を売上高とするなら、前期の売上高(実際には、4月からの1年間であって、3月に来期の目標を立てるので、今期とも言えます)があり、今期の売上高達成するべき金額があるなら、今期の売上高を各月の目標値に分け、その各月で目標を達成しているかどうかを各月の売上高と累計と比較することにより管理していきます。
以下の表とグラフは、9月まで実績が終わった時のもので、10月の数字が決まった時点で、10月の実績の部分に数字を入れていきます。このグラフを使うことで、毎月の進捗がどの程度なのか、上長に確認してもらい、経営資源の配置や叱咤激励、対策を一緒になって考えていけると思います。
特に、上のグラフで実績累計が予算累計に達していない場合には、責任者として、今後どのようにして挽回していくかの内容を本グラフに添付して、上長に提出する必要があります。上記のような例では、予算累計より実績累計が伸びているので、なんのコメントも不要でしょう。褒めてもらいたいが故にコメントを作成する時間がもったいないです。
上記例では、売上高でしたが、本内容は、クレームの減少や欠品数量管理、費用の減額等々、多種に使えると思います。参考までに、エクセルファイルを添付しておきます。
付け加えますが、上記目標管理については、品質目標の管理だけでなく、いろいろ目標を立てた時にその進捗状況を確認するのに、役立つと思います。
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