私が入社したときには、40歳を超えると商品開発できないから若いアイデアでどんどん新製品を作っていってもらいたいと言われておりました。しかし、現実は若い社員のアイデアは、上司が認めても会社という組織の中では、製品を上市するまでには、いろいろな壁があって頭ごなしにダメと言われたり、事実上簡単には新製品を発売するには、時間と社内への調整労力が必要でした。
アイデアは、0から作れない。
その後、数十年経って、わたしが悟ったことは、アイデアは、0から作れないということです。知識と経験が基本にあり、さらにお客様指向で、お客様の問題や課題を解決したいという強い信念が必要であることがわかりました。
知識が必要
知識を向上させましょう。商品開発には、広い深い知識が必要です。まずは、現状製品の素材、原理や仕組み、自社品、他社品、強み、弱み、絶対になくてはならない機能、別になくてもよい機能、知的財産権、原価構成と仕組み、販売経路、現状の製品にお客様が満足しているか、不満点があるか等々、実に多くの知識が必要です。上記の知識を全部ひとりで収集して認識して体系的に把握することは、それだけで時間がかかって商品開発するまでに、時代が変わっていってしまいます。しかし、普通の会社であれば過去のノウハウの蓄積があるので、ノウハウの蓄積がどこにあるのかを知ることが早いと思います。また、展示会や学会も多数あるので積極的に展示会へ出向いて最新の情報を入手しておきましょう。
知識が十分に備わってくれば、後は、知識のなかで、Aという知識とBという知識を、掛け算、割り算、足し算、引き算を行って、あたらしいアイデアに進めていくということです。
新しいアイデアを思い付いたら、まずは、メモっておきましょう。会社の仕組みでアイデアを収集する仕組みがあれば、是非とも忘れないうちにそこに記録しておきましょう。
次にアイデアについて、知的財産権がすでに取得ないし、公開されているとすれば、その状況を把握しておきましょう。知的財産権が公表されていなく、特許ないし実用新案が取得できるであろうものについては、できる限り出願しておくことをお勧めいたします。ざっと出願費用は1件30万円程度ですが、新入社員でも皆さんへ支払っている給与からすると、一人当たり30万円以上は会社は負担(手取りのことではありません。)しているのが普通ですので、開発部なのに、なにもしない方が、会社にメリットはなく、多少費用が掛かっても会社の知的財産権を増やした方が、会社にメリットがあります。
経験
経験が重要です。「失敗は成功の基」ということわざがありますが、本当にそのとおりです。
失敗を恐れて、なにも進めない、新商品を発売しようとしない。会社の体質がこの後ろ向き体質の状況では、会社に未来はありません。実際に発売してみないと、本当に良い商品なのか?お客様が欲しいと思っていた商品であったのか?それともピント外れの商品であったのか?がわかりません。
それは、いくら発売前のアンケートを何回重ねても答えは出てきません。お客様が金銭を出費して購入してもらうことしか本当の評価となりません。
発売の失敗が、商品だけにあったわけでない可能性もあります。販促活動がちぐはぐであったり、営業的に発売時期が合致していなく、とっても営業商談がいけない事情であったり、環境的にその発売時期が失敗ということも少なくありません。
「新製品が当たる確率は、1割もない」前提で考えれば、会社の上層部もある程度失敗して当たり前という前提でマネジメントしてもらいたいと思います。
まずは、発売をして、悪い点があれば改良、また改良、さらに改良と製品を育てていく姿勢でないと、受け入れられる新製品の登場は不可能と言って良いと思います。
マーケティング
一般的にマーケティングを行わないで新製品を発売することは非常に危険です。上記でまず発売してみて失敗してみてくださいと書いたばかりなのですが、マーケティングは最低行ってください。
現代では多様化の時代です。以前では、便利なものはみんな便利だと思い、多少それが自分の要望にあっていなくても、そのものを改造したり、使い方を編出したりと工夫しながら使うことで、同じ仕様でもよかった時代は終わりました。日本人全員が喜んでもらえる製品は、すでにもうないと思って良いです。
セグメント化
日本人全員を相手にする商品ではなく、お客様を絞り込む必要があります。QC7つ道具でいうところの「層別」です。男性向け・女性向け、若者・老人、高所得者・低所得者、はやりが好み・レトロが好み、簡単好き・自分で創作が好き、いろいろな分け方があります。
今発売しようとしている新製品が、どのお客様(ターゲット)に対して喜んでもらえるのか?を明確にして表現しましょう。
コンセプト
セグメント化してターゲットが明確になったら、どのようなものかコンセプトをはっきり打ち出しましょう。商品の機能からデザイン、パッケージの色、販促方法にいたるまで、コンセプトがはっきりしていればいるほど、具現化しやすくなります。
ペルソナ(persona)
ペルソナは、今回の新製品を使ってもらう架空の人物像を作り、そのような人が使うととてもその人が喜ぶまたは便利な商品です。とお客様のイメージをわかりやすく説明できます。たとえば、以下に二つの例を示しました。
私は鈴木八郎太。八郎太といっても8番目のこどもではない。私は、結構いい大学を出て製薬会社に勤めている。仕事内容は地方都市のMRという名称だが、実際は営業活動が主な仕事だ。年齢は31歳。昨年係長になったが、部下がいない係長だ。独身で、5つ年下の彼女はいるが、結婚の予定はない。生まれた場所とは600km以上離れて一人暮らしで生活をしている。主な得意先はクリニックと中堅の病院であるが、直行が認められているので、会社貸与の車でお客様のもとへ向かう。ドクターは男性が多いが、クリニックで働く人たちは女性が多いので、けっこうな人気者だと自分で思っている。朝は、得意ではないので朝食を作ったり食べたりしている時間がもったいなくて、ぎりぎりまで寝ている。そのため朝にシャワーをして寝癖を直して出発するのが日課だ。なぜか直行を認めている会社なのに、日報は会社で書くしきたりがあって帰りは特に得意先との用事がなければ、会社に戻り日報をその日のうちに入力しなければならないため、帰りは夜中の11時を過ぎることが多い。帰るとテレビを見ている余裕はなくて、そのままベッドに沈み込む場合が多い。土日もドクターの付き合いが結構な頻度あるので、彼女に会う機会も多くはない。ただ、仕事中は、待ち時間が多いので、せこせこ働いているという感じがなく、空き時間にYouTubeやネット検索等で仕事に関する内容を学習することができる。決して携帯ゲームとか暇つぶしをしているわけではない。と自負している。
わたしは、花園加恋、28歳。恋多き良い名前を両親からつけてもらったと感謝しているが、昨年、大恋愛の末結婚した旦那と別れました。2歳になる娘は私が引き取りました。母子家庭というやつです。私はたまたま看護師の資格をもっていて、収入もそれなりにあることから、一人で育てていこうと決めました。ただ、仕事の時間が規則正しくなく夜勤もこなさなければならない状況の時には、実家の両親に頼らざるを得ない状況です。ただ、それは離婚したからでなく、結婚しているときからあまり変わっていないので、離婚とは関係ないと思いますが、娘の時間と合わないことがあるのは、親として少し申し訳ないと思っております。別れた旦那からは、養育費を振り込まれるわけなのですが、はじめの2カ月のみで、その後の振り込みはありません。まあ、催促してもお金が出てくるわけでもないので、しかたないと連絡をしないでおります。娘が本当に可愛いので、この子のためには何でもする覚悟は決めております。今は歩けるようになったことから、本当に目がはなせない時期です。できるだけこの子と一緒に過ごせる時間を大切にしていきたいと考えておりますが、実家の父が、軽い脳梗塞を起こして入院をしてしまいました。いつまでも両親が健在であると思っておりましたが、現実はまさに諸行無常であることを思いだしました。両親のこと、娘のこと、自分のこと、いろいろ考えなければならない時期であると、再認識しました。
販促活動
販売促進のための活動です。どんなに良い新製品でも、知ってもらい、興味をもってもらい、欲しいと思ってもらわなければ、絶対に売り上げにつながることはありません。
また、万一、欲しいと思ってもらっても、それが販売していなかったら売上になりません。
販促もたくさんの方法があって、これをやれば絶対に成功できるというマニュアルはありません。まず、基本的なことは、パンフレットを作成して、この新製品は、なにがお客様にとってメリットがあるのかを文書によって打ち出すことは、最低限必要です。
商流の流れからの販促活動は、パンフレットと商品サンプルをもって、まずは問屋さんと小売店に、実地で紹介する。併せて、この新製品を取り扱うメリット、売上見込み、店頭回転率、見せ方等々、新製品をまだ知らない消費者に店頭で知ってもらえるための工夫を合わせてご紹介させていただきます。本当に売れる商品であることを証明するために、ある一定期間の棚を金銭で買い取る等も販促活動の一環です。問屋さんや小売店に対して、ある一定数量以上の売上が達成すれば、金銭をバックするリベート契約も販促の一つです。
消費者に直接働きかける販促活動は、テレビ宣伝、新聞の広告欄、店頭が出す折込広告、YouTube広告、ネット広告と多種多様ですが、資金には普通、上限があるので、もっとも効果を出すための活動はどう設計するかを費用と利益の面から検討していく必要があります。
仕様書
開発部や設計部門のアウトプットは、仕様書です。
仕様書には、その商品を特定する番号や、品名から、その製品の寸法や重さ、パッケージ重量も必要となります。また、出荷判定を行うのに必要な、試験項目と判定基準も仕様書の中に必要です。
当社では、中身の中間製品仕様書と中身がどのようにパッケージングされているかの製品仕様書というくくりで分けており、中間製品仕様書には、詳細の設計事項、試験方法や判定基準の記載があるので、社外秘としております。製品仕様書には、入り数や製品のサイズや段ボールサイズが入っているだけなので、社外秘にはしておりません。
社外秘や機密事項の文書には、必ず、秘密である旨の記載をすることをお勧めします。例)confidential、社外秘、機密文書 等
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